ボタニカル展に寄せて
3月から始まるボタニカル展に際して、工芸館から質問シートなるものを渡された。
その中の、あなたにとってのボタニカルとは、という質問を見たときに思い出されたことがたくさんあったので、少し書いてみようと思う。
ボタニカル=植物からつくられた、植物由来の、
植物を思い浮かべるとき、一番思い出すのは幼い頃からの家族との時間。
私の家の庭にはたくさんの植物がある。
松、泰山木、椿、山茶花、サルスベリ、シュロ、コブシ、柘植、ボケ、などなど
そのいろいろの木々の一部は、祖父が植えたものと聞いている。
それは私が生まれる何年もまえのこと。
祖母は庭で育てた花を町へ売りに行っていた。
ガーベラ、バラ、菊、ミヤコワスレ、が今思い出せるその当時の花。
夏の暑い日に、父に名前を聞いたモミジアオイ。
モミジに似た形の葉っぱで、真っ赤な花を咲かせる。
辞典で一緒に探して確認したことを覚えている。
今は母と二人、季節ごとに咲く花を大いに楽しんでいる。
特にオオヤマレンゲと泰山木は、とても良い香りがするので蕾ができると枝ごと切って、玄関や部屋のなかへ。
咲いたら1日しか持たないというなんともはかない花だけど、香りは家中に広がるくらいに強くて、どこにいても幸せで優雅な気分になる。
ツツジもサツキも金木犀も咲くし、月桂樹は料理に使えるし、
ラズベリーで作るジャムは最高。
この木々は、ここで暮らしてきた家族と、家の歴史をずっと見てきた。
今も変遷を繰り返し、たまに新顔が加わったりもする。
(でも失敗したりもする。あと忘れてしまって放置、もある。ごめんなさい。)
そういうわけで
私にとっての植物は、家族との思い出。
会ったことのない祖父とも、記憶の中にしかいない父や祖母とも、いつでも繋いでくれる。
今日は父の20回目の命日と
東日本大震災が起きた日。
家族の繋がり、人との繋がり、命のはかなさと尊さ、繋がってきた奇跡と軌跡。
そういうものを考えながら、
この同じ景色が、どうか平和にずっと続いてくれたらと願う。
植物と共に育ててくれた家族に感謝している。
これからもこの場所が続く限り、家族の暖かい記憶がたくさん生まれる場所でありますように。